2013年5月9日木曜日

上海で実感、ゆっくり沈んでいく中国経済:「超圧縮成長」の終り

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●中国商務部の公表データより筆者作成

●中国国家旅行局の公表データより筆者作成


JB Press 2013.05.09(木)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37718

上海で実感、ゆっくり沈んでいく中国経済
観光客も外資も寄り付かなくなった?

 中国の2013年1~3月期の国内総生産(GDP)は、前年同期比7.7%増(物価変動の影響を除いた実質)で、前期の7.9%増から減速した。
 上海でも景気はよくない。
  誰に聞いても「不好(よくない)」と言う。


 筆者は4月中旬、上海市北部の閔行区に住む友人李さん(仮名)宅を訪ねた。
 私の顔を見るなり「もう食べられる物がない」と不満をぶちまけた。

 鳥インフルエンザが蔓延する上海では、市民の台所から鶏肉が消えた。
 元凶と見なされる「生きた鶏」は殺処分された。

■家禽売り場が雀荘に

 「ほら、この店も倒産しちゃった」

 彼女と歩いた航北路では、「生きた鶏」の専売店が、設備・備品はそのままの状態で夜逃げ同然で閉店していた。
 鶏の処分を命令された家禽の生産業者と販売業者は、政府からたった一度、500元の手当を受け取っただけだと聞く。
 今、どこでどんな生活をしているのか。

 豚肉はどうかと言えば、黄浦江に漂流した1万頭超の「死豚」の一件で、消費者からすっかり敬遠されている。
 3月上旬、豚の死骸が大量に川に投げ込まれたのは、
 「死んだ豚を再流通させていた仲介業者が捕まり、養豚農家からの引き取り手がいなくなってしまったからだ」
と李さんは言う。
 最近の報道ではこれが最も有力な説となっている。
 死んだ豚も立派な商品だったのだ。

 牛肉はどうなの? 
 と聞くと「これも勘弁だ」と言う。
 「数日前に買ってきた牛肉を焼いたら、10分の1ほどの大きさに縮んでしまった」というのだ。
 「全部水分だった
と李さんは呆れる。

 「タマゴも誰も買わなくなった」と言う。
 近所のカルフールでは、毎日、安売りのタマゴに早朝から老人が列を作っていたものだが、今では誰も買わない。
 人気だった安売りタマゴは夕方になっても山積みのまま残っている。

 鶏肉も豚肉も牛肉も、そしてタマゴもダメ。
 残るは魚と野菜だが、「重金属たっぷりの近海の魚」は、やはり敬遠される
 一方で、野菜は急速に値上がりしている。
 ブロッコリーはこれまで500グラム3元(約48円)だったが、今は6元(約96円)に高騰している。
 「100元札は10元札程度の価値しかなくなった」と愚痴っていた彼女にとって、これはさらなる打撃だ。

 最近は飲用水の老舗ブランド「農夫山泉」が敬遠されている。
 なんでも取水場がゴミ処理上付近にあるかららしい。
 ここ上海では、もはや安心して口に入れられる食品はないと言ってよい。

■金融機関からひっきりなしにかかってくる営業電話

 もともと、
 中国流の商売は著しく商業道徳を欠く
と言われていたが、
 景気の悪化でさらに悪徳商売が横行することになるだろう
と思うと、気が重い。

 いま、上海の街を歩くとあちこちで目を引くのが、「清倉」の2文字の張り紙や看板だ。
 「あそこも、ほらあそこも」と李さんは言う。
 洋品店や靴やバッグなどの専門店にも張られている。
 そう、清倉とは「閉店セール」の意味である
 どこも景気が悪いのだ。

 上海では住民1人当たりのGDPは1万ドルを超え、市場としては今後ますます中間層の成長が期待されている。
 だが、街中では「明るい未来」を肌で感じることができない。

 「世の中みんな、損した人ばかりだ」
と李さんは言う。
 彼女も株で大損した。
 彼女の友人も財テク投資に失敗し、100万円の大穴を開けたという。

 そこにこんな追い打ちが入る。
 大損して意気消沈している消費者に、金融機関から悪質な営業コールがかかってくるのだ。

 ■「失ったお金を3年で取り戻しませんか?」

 実は筆者のところにも、1日に何本も同様の電話が入る。
 「ハーイ、ヒメダ小姐、ワタシ、マイクデス」といった英国系金融機関からの怪しげな電話もあれば、中国の花旗銀行(シティバンク)からの次のようなお誘いもある。

 「保本保息(元本、利子保証)で5%以上の利子を毎月確保します。
 リスクなしの安定した商品ですよ」

 日本人からすると恐ろしく魅力的な高金利だ。
 興味本位で担当者に会ってみたところ、契約書面には2.5%と書かれており、どこにも5%の表記はない。
 「銀監会(中国銀行業監督管理委員会)から指導が入るため、書けないんです」と営業担当。
 「シティバンク」と言えば世界的に名を知られる銀行だが(各国で経営は別)、そんな金融機関でも「契約書に書けない内容」があるらしい。

 財テク経験の長い鄭さん(仮名)は「いまどきの中国の金融商品はどれも信用できない。下手に手を出さない方がいい」と強調する。中国では信託法もろくに整備されておらず、トラブルが続出している。信用に足る金融商品は定期預金ぐらいしかないようだ。

■「発票(領収書)族」が作り出していた一大消費市場

 個人消費者の懐の寒さは、当然内需動向に反映される。
 中国の2013年1~3月期の内需は、3月の個人消費が前年同月比12.6%増にとどまった。
 昨年後半は15%増程度だった。

 鈍化の理由の1つが「公費支出の取り締まり」だろう。
 腐敗撲滅に「本腰を入れろ!」と国民に突き上げられた政府が、とりあえず着手したのがこれだった。

 内需の鈍化が、もしこの取り締まり強化によるものであるならば、この国の消費の多くは「発票(領収書)族」によるものであったことが浮き彫りになる。
 中央でも地方でも、官僚たちは連日のように接待を受け、贈収賄を繰り返してきた。
 2012年6月、財務部が明らかにした公費による外遊、クルマの購入、飲食の接待の合計は93億元を超えるという。
 中国の「一大消費市場」の正体はこれだったのか?

 そもそも一般市民は地元での「買い物」に消極的だ。
 うっかり購入すれば、それは粗悪品かニセモノか、あるいは桁違いの高級品だからだ。

 筆者も上海では基本的に何も買わないようにしている。
 買うと、必ずと言っていいほど「面倒なことが起こる」からだ。
 電子機器の充電のために買ったUSBコネクタは不良品ばかり掴まされ、3度も交換した。
 電子辞書に使う単三電池は2週間で切れた。 
 ピアスを買ったら、右と左で全く異なるデザインのものが対になって箱に入れられていた。
 そのたびに取り替えに行き、交渉をする。
 本当に「神経がすり減る」のだ。

 サービスにもまったく期待しなくなった。
 店員の質がここ数年で格段に落ちたからだ。
 外資系企業が集まる場所にあるそれなりに高級なレストランでさえ、食事はたちまち不愉快になる。

 つい先日も、人数分の皿とフォークを揃えるのに15分も待たされた。
 「あんた、人数も数えられないの?」
と、友人の徐さん(仮名)は若いウエイターに向かって声を荒げた。
 サービスのなんたるかを知らない80后・90后(80年代、90年代生まれの若者)との疲れるやり取りを想像すると、レストランに行くのもためらいがちになってしまう。

■ニセモノ市場から姿を消した日本人観光客

 こんなこともあった。

 筆者は最近、ビザ更新のためにビザセンターを訪れた。
 大病院の待合所なみの混雑を覚悟し、「想定処理時間2時間」を心に準備した。
 ところが、予想に反して外国人専用フロアはガランとしており、ほぼ「待ち時間なし」で更新が済んだ。
 これは一体どういうことなのか? 
 かつてこのフロアは、各国から集まるビザ申請の外国人であれほど賑わっていたのに

 上海人の孫さん(仮名)はこう言う。
 「人件費や物価がこれだけ上がってしまっては、
 外資にとって上海の魅力はもうないということだ」。
 なるほど、2008~2012年の対中投資国・地域別トップ5を見ると、日本を除く4つの国・地域は横ばいか下落傾向を示していることが分かる。

 地下鉄2号線の「科技館駅」は、このビザセンターの最寄り駅だが、そこに巨大ニセモノ市場が広がっている。
 ここは上海の屈指の観光スポットでもあったが、すっかり往時の勢いを失っていた。
 外国人観光客の影がほとんど見えず、閑古鳥が鳴いている。
 商売人たちもおとなしくなり、今は買い手の言い値がまかり通る。

 この巨大ニセモノ市場に大挙して押し寄せ、ニセブランド商品を嬉々として買い求めていた多くが、日本人観光客でもあった。
 中国を訪れる日本人観光客の数は、反日デモ以来落ち込んだままだ。
 同時にニセモノ市場の商売人たちも「商売あがったり」となってしまった。

 数年前まで上海は間違いなく「成功者の舞台」だったが、すっかり色褪せてしまったようだ。
 日本人も足を遠ざけるようになり、
 今や経済の「負の連鎖」が顕在化
しつつある。

 ある日系大手メーカーの幹部は
 「2000年代のような市場の成長が最近は望めなくなった」
とコメントする。
 「それが、
 反日デモの後遺症という一時的な要素なのか、
 それともこれが中国市場の限界なのか、
判断はとても難しい」(同)

 すべてが悪循環にはまった上海経済。
 生活に困窮した商売人が、さらに生活に困窮した消費者を狙う──、
 そんなすさんだ社会になっていくようで、
正直、恐ろしさを感じる。

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by 姫田 小夏 Konatsu Himeda
 中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。大学卒業後、出版社勤務等を経て97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、東京で「ローアングルの中国ビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」を主宰。現在、中国で修士課程に在籍する傍ら、「上海の都市、ひと、こころ」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)。目下、30年前に奈良毅東京外国語大学名誉教授に師事したベンガル語(バングラデシュの公用語)を鋭意復習中。



レコードチャイナ 配信日時:2013年5月9日 10時13分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=72081&type=0

新しい外国人の出入国制度を発表、滞在地域外での活動が不法滞在に―中国


●6日、中国国務院法制弁公室は公式サイトで「外国人出入国管理条例」(意見募集稿)を発表した。新しい制度では、外国人が定められた滞在地域外での活動は不法滞在とみなされることになるという。写真は北京の出入国管理センター。

 2013年5月6日、中国国務院法制弁公室は公式サイトで「外国人出入国管理条例」(意見募集稿)を発表した。
 新しい制度では、外国人が定められた滞在地域外での活動は不法滞在とみなされることになるという。
 中国新聞社が伝えた。
 今回発表された出入国制度では、以下の状況のいずれか一つに当てはまるものが不法滞在とみなされることになる。

1.ビザ、在留許可書類の規定する滞在期間を超えて滞在するもの。
2.ビザ免除によって入国し、ビザ免除期間を超えても滞在手続きを取っていないもの。
3.規定の滞在地域を出て活動するもの。
4.その他の不法滞在。

 また、就労許可証の規定する地域外で就労するもの、許可証の定める勤務先以外での就労、留学生の職種、規定時間を超過する労働なども、不法就労とみなされることが定められている。



 中国経済は降下のプロセスに入ってきている。
 ために、当局は対外的に強く出て威嚇し、対内的には取締を強化して封じ込めを厳しくする方針のようである。
 言論規制はだんだん強くなってきており、中国の負の部分は報じないように手を打ちつつある。
 また、外国人の滞在地域を指定してダークな地域への立ち入りを禁止しはじめてきている。
 今後はさらなる規制が様々な分野で行われてくるだろう。
 その最大の要因は経済の調子が悪いということに尽きる、といっての間違いではない。
 このような状況では「チャイニーズ・ドリーム」は画餅となったが、それがゆえに「チャイニーズ・ドリーム」を大声で叫ばねばならなくなったともいえる。
 習近平の時代とは、旧東欧の状態に進みゆく可能性も残っているということだろうか。



【中国ってなんでそうなるの!】




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